漁業休業に思う

15日に漁船が一斉休業した。燃料高への抗議という。ある種のストライキである.

思えば、小さいとき、バスがよくストライキで止まりますという(物々しい)貼紙をみた。
「2月15日24時間全面スト」とか赤地に白抜きででかでかと書いてある奴である.
小学校のスクールバスはスト除外であったが、子供心に「なぜ電車やバスはストをするのか、自分の家(農家)はストしないのか」が不思議だった.今なら分かる.詳しくは分かってないが、それをしないと経営陣がむちゃくちゃするからだ。農家がしないのは組織がかいならされてるから。自営だけど、実質は補助金という麻薬と農協や行政という縛りにかなり縛られている(ように思い込んでしまっている).

もし、クルマを作れば作るほど赤字なら会社はすぐに値上げか製造中止をやるだろう。
原理的には農業も漁業もおなじなのだが、現実にはラインを止める様には止められない。
酪農なんか、種付けして、10ヶ月かけて出産させてようやく数か月間搾れるのだ.生まれた仔牛が♀なら2,3年育てて同様のルート、オスなら去勢して肉牛になる。いずれにしても現金化にはえらい時間おかかる商売であるし、毎日餌はやるし、乳も搾る.今日は安いから搾乳を止めるというわけにはもちろんいかない。1日でもそれをすれば病気でダメになってしまう.

さて、そのやればやるほど赤字なので、うちの近所も同業者がずいぶんと廃業していった.高齢化のところはこれが潮時といい、若い人は借金で首をくくる前に…ということだ。搾ってもガソリンより水より安い牛乳だ。缶ジュースが1本350cc120円の時代に牛乳は1000ml158円…かいてて腹立ち通り越して情けなくなってきた.

米・野菜・果物にしても肥料・農薬の原料は輸入に頼ってるのでどんどん値上がりしている。
とくに果実・穀物をみのらせるのに必要なリン鉱石アメリカ・中国の輸出停止などで品薄である.すでにホームセンターの農業資材コーナーは肥料のところが半分以上空である.お金をつんでも買えない状態.今の品種は化学肥料をある程度もらう前提に改良されていい味になっているので、これらがないとうまくできないだろう。

以下妄想だが、いっそ、1週間位ストをすればいいのに、と思う(国鉄の貨物ストみたく…なんでそんなことを知ってるんだろう).全農家漁業者共同戦線で。それで世間の生活が何ともないのなら、ある意味日本の食卓とはその程度のものだ.中国産でもなんでも食べればいい.

その間、みんな(つくる側も含めて)辛い思いはすると思うけど、自給率39%(ただし、カロリーベース・かつ国発表)を自覚するショック療法にはなるだろう。平成5年の大冷害の時には米騒動になった。そのくらいの危機感が世間にほしい。
そのうち、牛乳1本/キャベツ一玉1000円とか言うような時代がこないようにするためにも。


さて、愚痴ばかりでは何なので。

建設的に考えれば、ここで考え方の大転換をしないといけない.
(1)肥料・農薬は自前で調達する.
(2)借金しない.
(3)直売所の活用(農協や商社に頼らない)

(1)でいえば食物残渣の肥料化である.まず残り物が出ないようにした上でそれでも出るくず(野菜の皮、魚の頭、家畜の骨・内蔵など)をきちんと処理して田んぼに返す.戦後すぐだと人糞活用もかなりあったのだが、下水処理が多くなってるのでこれは実際には難しいだろう.下水処理場の汚泥処理はどうかというと、重金属が多くて使い物にならないそうだ.
 あとは、森林資源や家畜糞の活用。これも声高に言われる割には進まない.基本的には植物の腐ったものをまた植物が吸い上げていくわけで循環は成立するはず(厳密な証明は困難だろうし、それに意味はない).品種が食味優先で化学肥料必須になっているのなら、これを有機主体の農業に適合するように場合により改良(ある意味原種帰り?)させる必要もあるだろう.もっとも、植物は偉いので何度か植えているうちに環境を感知して自分で適応していくかもしれない.人が余計なことをするのはどうかと思う。

(2)先月のBigtommorowという雑誌に田中義剛花畑牧場に関する記事があった.彼は本当にすごいなと思う.入植するとき、農協が設備を借金+補助金で作って100頭飼えと迫ってきたのを断って1頭から始めたそうだ。
要は補助金・農協からの借金という50年来の麻薬を断つことだ.勇気のいることではあるが…しかし、過去のしがらみから逃れないことには.新しいことは起こせない.

(3)これはJA、道の駅、女性グループなどがやっている。スーパーの中にも「地元育ち」コーナーが増えてきた。<さっき農協と書いたが意図的に使いわけた(農協は正式名農業協同組合の略称、JAはその愛称)。>女性起業というテクニカルタームもあるくらいだ。( http://www.ifkg.jp/whats/top.htm )そういったところでは必然的に地産地消になる。輸送費をかけて運ぶということはなくなる。輸送時のCO2が少ないということにもなるだろう。何より顔が見える.安心さ、見た目だけではないのでいままでならB級品で捨てていたものに値段がつく.何よりそれで地域が活性化するのではないだろうか.(お金が地域の中で回るという意味においても)

どの案もそれだけですぐに解決するわけじゃない.戦後60年かかって崩れてきたものが2,3年で元に戻るわけがない。でもどこかで崩壊してしまう前に(もしかしたら手遅れだとしても、崩壊したなら再構築するために)銘々できることからやるしかないのかな。

できること→食い物はなるべく地元に近いところのものを食べる。(表示偽装云々はともかくとして)
よい品質のものを少し食べる(ダイエット、良品生産の原動力、安売り品が売れなくなれば安売りする意味がなくなる→その分の原資をよりよいもの作りに生かせる可能性)
生ごみは捨てずに堆肥化する→ベランダで何か野菜を作ってそこで使う.農家の苦労を知ってほしい。きっと食物に対する意識が変わる。


夜中でうだうだ書きました.誤謬もあるかもしれません.でも危機的なことを打破するには何かアクションが必要でその一助になれば幸いです.